AnnoReader開発コンセプト

AnnoReaderは、英語学習者が英文をもっと簡単にスラスラ読めるように開発されたアプリです。英文法を身につけるにあたって、英語学習者が苦手とする英文の構造把握に焦点を当てて、その理解を助けることにフォーカスしています。

英文法の基礎と文の構造把握

英文の構造把握と言っても漠然としています。ここでは英文を、

  • 「この部分は主語である」
  • 「この部分は主語の動きを表す部分(動詞)」
  • 「ここは動作を補足する部分」

といったパート分けをする作業のことと考えました。

例えば

He goes to school.

という文章の場合、これを「He」「goes」「to school」というパートに分けます。

そして次にこれらのパート同士の関連を探す作業をします。この文の場合

to school → goes(go)

to schoolが動詞のgoes(原型go)と関連があることを見つけます。AnnoReaderで表示すると、

表示例(タップで拡大)

こうなります。ここまでの作業が終わると、それぞれのパートの意味を取って「彼は」「学校に」「行く」という意味を理解できるのです。 英文法的にはNNは名詞、VBは動詞、PPは前置詞です。

な〜んだ、そんなの当たり前だよと思うかもしれません。確かにこれは短い文章では簡単な作業に見えますし、実際簡単です。しかし文がより長く複雑なると、それに比例して複雑度が跳ね上がるのです。

She sells seashells by the seashore, The shells she sells are seashells, I'm sure. So if she sells seashells on the seashore, Then I'm sure she sells seashore shells.

似たような単語が連続していて難しく見えますね。ちなみにこれはTongue twisterと呼ばれる有名な早口言葉のフレーズで、意図的に複雑で発音しにくい文章になっています。

さて、この文章の構造はどうなるのでしょう?

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英文法としては、修飾関係も含めてこのようになります。

この文で出てくる文法はシンプルで、SVOCの5文型で言うと動詞sellが含まれる「She sells seashells」はSVO文型、be動詞のareが含まれる「I'm sure」などはSVC文型です。中学校で習う知識で説明が付きます。

しかし、それらの知識があっても上記の構造を導けるとは限りません。それは何故でしょうか?

それは「英文法の知識」に加えて、構造を導くための「経験」が必要だからです。

たとえば上記の例文に出てくる「The shells she sells are surely seashells.」というセンテンスは、she sellsがThe shellを修飾しています。こういう後置修飾は分かる人には一瞬ですが、経験の少ない初学者の人には大きな難関になります。

英文法の知識は学校教育でも習うものです。なので日本人なら多くの人が一定の素養をもっているはずで、大きな問題ではありません。一方で「経験」は大問題です。初見の英文に対して文法知識をどのように適用していくのか、この判断には「経験」が必要になります。

つまり初見の英文において

  • 主語(S)はどこ?
  • 動詞(V)はどこ?
  • 目的語(O)はどこ?
  • Oは一語?それとも複合語?
  • どこがどこを修飾してるの?

こういった判断は一定のルールでは決まらないので、経験を元に類推していくしかないのです。そして学習者にはその経験が圧倒的に足りないので、類推が十分にできないのです。

単語が理解できていて文法を知っているのに長文や複雑な文章が読めない、その理由はここにあると考えています。

AnnoReaderが解決すること

例として以下の英文を見てみましょう

Alice was beginning to get very tired of sitting by her sister on the bank, and of having nothing to do: once or twice she had peeped into the book her sister was reading, but it had no pictures or conversations in it.
Alice's Adventures in Wonderland - Lewis Carroll

訳は「アリスは姉と並んで何もすることなく座っており退屈でした。何度か姉の読んでいる本をのぞき込みましたが、そこには絵も無ければ会話もありませんでした。」となります。

この英文にAnnoReaderを使うと以下のようになります

表示例(タップで拡大)

元の英文には無かった単語の下のアンダーラインや、点線で囲われた単語のまとまりがが追加されていますね。中学校や高校の英語の授業でこういった作業をやったことある人もいるかもしれません。

こういった文章を理解しやすくするために追加される様々な情報のことを、英語ではAnnotation(アノテーション)と呼びます。 AnnoReaerを使うことで、英文に自動でAnnotationを追加することができるのです。

また単語力の低い初学者の理解を促すために、翻訳も同時に表示します。

これらのアノテーションによって、

  • 単語の品詞
  • 複合語
  • 主語、動詞、目的語、補語(SVOC, 5文型)の位置
  • 句や節の修飾関係
  • 単語、句や節の日本語訳

これら英文法の情報が瞬時に可視化されます。

アノテーションを少し詳しく見てみましょう。

表示例2

英文を意味のかたまりに分けて、点線の枠で囲います。枠の上に小さく修飾される語が表示されるので、修飾関係が一目で分かります。

また単語にはアンダーラインが表示されています。これは品詞を表していて、例えばは名詞(Noun)、は動詞(Verb)を表します。アンダーラインが複数の単語にまたがっている場合、これは複合語を表しています。長い名詞などが一目で把握できるようになっています

効果的な利用方法

AnnoReaderを使うと構造把握を自動で行ってくれるので、学習者は空いた頭のリソースを文の意味の理解に回すことが出来るようになります。内容がより頭に入ってくることが期待できますし、もちろんリーディング力もスピードも上がるでしょう。

個人的にはAnnoReaderを、基礎英語(文法、単語)を学習している初級者の方からある程度英語を使いこなせる中上級者くらいの方まで、全ての方におすすめできると思っています。一方で、英語の意思疎通に困らないレベルの方やネイティブの方にとっては、アノテーションによる情報過多が逆に邪魔に感じるかもしれません。そういう方は無理に使う必要は無いと思います。

そう考えると、AnnoReaderを使って学習を進めていくうちに英文の構造が見えるようになって、自然とAnnoReaderから離れていく。それが学習の一つのゴールになるのかもしれません。

ちなみに私は、英語のニュースサイトを読んだり、本業のソフトウェア開発に関わる技術ドキュメントを読むときに愛用しています。またまだ離れるには時間がかかりそうです。

おわりに

もしこのサービスが皆様の英語学習に少しでも貢献できたのなら、開発者としてこれほどうれしいことはありません。ぜひお役立てください。

また、AnnoReaderは皆様からのフィードバックをお待ちしております。ご要望や不具合報告などありましたら、お気軽にお送り下さい

連絡先

Hironobu Saito <hiro at hironobu.org> @hironobu-s

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